「 やったらやった分だけ、見返りが返ってくるのが分かってる。自分を磨けば、周りのレベルも上がってくる。得られる情報や人脈も大きくなる。それが私のモチベーション。」
谷本有香さん( 日経CNBCキャスター )
今回お話を伺ったのは、アナウンサーでは珍しい経歴をお持ちで、日経CNBCでキャスターを務める谷本有香さん。今回のインタビューを楽しみにしてくださっていました。大人の女性らしい華やかな雰囲気をかもしだす一方で、無邪気なコドモっぽさをにじませていた彼女に、仕事のこと、家庭のこと、そして将来の展望などをお聞きしました。
<profile>
女子大で国文学を学んだ後、山一證券へ入社。倒産を期に、社内で担当していたアナウンサーとして食べていこうと、フリーに転身。大阪などで活躍したのち、ブルームバーグでキャスターとして活躍。現在の職に至る。
<サイト>
・日経CNBC
・time誌"The Wasted Asset"(記事の中に谷本さんが登場しています)
・ご自身のHP
20歳前後の頃、仕事や生き方に関して、どんなことを考えていましたか?
谷本さんの学生時代は、まさに就職氷河期であった。応募者のうち、内定をもらえるのはわずか2%だった。そんな中でどんなことを考えていたのだろうか。
「あのころは『何をやりたいか?』というよりも、『とにかく仕事先をなんとかしないと!』という思いが先にあったのね。女子大だし、国文学部出身だったから特に強みがあったわけじゃないし、純粋に数字で評価されるフェアな土壌へ行きたかった」
それで営業を志望していた、とのこと。その中でも株に興味があったため、証券に絞って受けていた、という。
「自己分析が得意だったの。だから自己分析だけとことんやって、戦略的に自分の適性を考えて受けてたの。エントリーシートでは落ちることがあっても、面接まで行ったらこっちの勝ち!面接は今まで一回も落ちたことがないの。会社研究をとにかくたくさんして、自分を生かせる切り口を探してた。自分を生かせる場所って、案外どの会社にもあるものなのよ」
証券会社から「キャスター」という方向転換、そのきっかけは?
「山一證券に入社した2日後に上司から、『株を紹介するコーナーがあるからそこのキャスターをやってくれ』と言われて。気付いたら服にマイクをつけられてた(笑)」とそもそものきっかけを話してくれた。
「最初からアナウンサーの仕事をやりたかった訳じゃなかったのよ。でも会社が倒産しちゃって、お金が吹っ飛んじゃってね。恐いから数えてはいないんだけど、自社株に使っていた給料(200万ほど!?)がみんなただの紙切れになっちゃって。
それで、価値感が変わったの。『会社にすがっていたらダメだ、自分で生きなきゃ!!』って思うようになって。じゃあ自分に何がある?って考えたとき、目の前にあったのがアナウンサーって仕事だったのよね」
フリーアナウンサー時代、女であることで苦労したことは?
フリーになると事務所に入るのが一般的だが、全部自分でやっていたという谷本さん。一件一件テレアポをして仕事を取っていたという。時には、『女一人で来やがって!』と罵声を浴びることもあったそうだ。
「仕事を取るまでは、とにかく大変だったわよ。でも一旦仕事をとっちゃえば、あとは実力勝負の世界。アナウンサーほどフェアな土壌はないと思うよ」
反対に得したことは?と伺うと、「アナウンサーに関しては、女性の方が得!」と番組を通じてのインタビュー経験を語ってくれた。
「女のほうが物腰が柔らかかったりするじゃない?だから男性だと聞きにくいことも、相手も身構えずに話してくれることって多いよ」
今のアナウンサー事情−「タレント化」をどう考えてる?
最近よく言われる『アナウンサーのタレント化』について、同じアナウンサーとしてどう感じているのかを尋ねてみた。
「彼女たちは大変だよね。テレビ局のアナウンサーは“女子アナ”としてカテゴライズされているから、何でもやらなくちゃいけないものね」
でも私は違う、と言う谷本さん。
「『私の専門は金融』と考えているから、アナウンサーがどうって話は支障ないかな。実は、うちの会社でも10人いるキャスターのうち8人はタレントさん。原稿についても会社からのサポートがあるんだけど、私は事務所を通してないので、何もかも自分でやらないといけない。株式事情について調べて、電話をかけたりして集めた情報を基に、自分で書いた原稿を読んでいるの」
日本でいうと男性アンカーの仕事に近い。海外のキャスターとも似ている。
「アナウンスするというよりも、私の仕事はジャーナリスト色が強いね。そこがテレビ局の女性アナウンサーと違うところ」
日本には、経済に詳しいアナウンサーといった特定のジャンルに強いアナウンサーは少なく、その意味で土壌が広いという。これからも専門家として、“経済キャスター”の仕事を続けたい!と語ってくれた。
*注:本来の意味で、
アナウンサー=原稿を読み正確に伝える人(アナウンスする人)
キャスター=ジャーナリストの要素が強く、アンカーとしてニュースにコメントができる人(例:筑紫哲也さん)
日本ではこの本来の意味とは逆に、コトバが使われている。
話題転換。「結婚観」と「仕事観」はどんなもの?
結婚願望ってありますか?という質問には、もちろん!結婚も仕事もという柔軟性を持ちたい。『理想の相手は生き方を認めてくれて、サポートしてくれる人!』と答えてくれた谷本さん。
「その分、自分の実力をつけなくちゃね。キャリアに依存しているのは会社に依存しているのと同じ」それは実力不足からくるものだと言う。
しかし、女性が仕事と家庭を両立するのはまだまだ厳しい社会のようだ。
「仕事をバリバリしている女性はかっこいい!って言う人は結構いるのね。でも、よくよく話を聞いてみると実際は“結婚したら仕事は辞めるんでしょ?”という考えの人が多いと思わない!?」
一同思わず納得。迫力に圧倒。(笑)
「日本には一般職という考え方があるじゃない?実は、TIME誌の取材を受けた時に話したんだけど、女性の社会進出が遅れているのは、アジアではインド・韓国との3国だけなの。その中でも日本が一番ひどくて、恥ずかしいけど日本が1番遅れてる。なんとかしたいと思うけど、国のシステムが変わらない限り、仕事を諦める女性がいるのは仕方のないことなんだよね」
世間では[30代未婚・子なし]を負け犬として取り挙げていますが、ご感想は?
「実際、先入観に過ぎないんじゃないかな?だいたい総合職で結婚していない人が多いなんて、ほんと?って疑ってしまう。統計を取ってほしい(笑)。実際に調べてみたら一般職で結婚していない人のほうがよっぽど多いはず」
イメージ先行で、男尊女卑の考えが根底にある、と話す谷本さん。昔からの性の住み分け(男女の分業)が今も影響を残していて、島国だからその傾向が特に強いのでは、と語る。
たしかにと納得。インタビュアーが最近読んだ本にも、『本能的に男性は弱いものを自分の下に置きたがる』という内容が書かれていた。女には一歩下がっていてほしい、という考え方が強いのかもしれない。
「そうだね。一般職ってのも、要は男性社員の結婚相手なのよ」
そういえば「いい奥さんになりたいんです」という自己PRをして、大手の一般職で多数の内定を貰った子がいると言う話を投げかけてみた。
「え、ホントに!?」呆れた表情で、驚きをみせる谷本さん。
「海外だとコピー取りやお茶だしを専門にやる人なんて誰もいないのよ。みんな総合職扱い。日本社会には男性的な視点でのシステムが全体に広がっているから、女性の社会進出はちっとも促されない」
そして、日本の報道のあり方も批判する。
「本来なら“おかしい!”という切り口で攻めなきゃダメなのに、日本のメディアは“かわいそう”路線で流すでしょ。外部(海外)のマスコミで叩かれないと誰も動かない」
最近は努力せずに、将来のことを諦めてしまう人が多くなったと思います。この原因は何だと思いますか?
「情報が増えたことで、みんな頑張っても仕方がないってことが分かっているんだろうね。努力をしないのは、ある意味賢いよ。でも、異端児を受け入れられない社会になっているのが心配。学校時代から“出る杭は打たれる”という環境の中で育ってきたから、価値観の違う人を受け入れられない現状がある。今は変わりつつある世の中だから、もう少しがんばってほしいんだけどね」
その一方で、変化を求めている世代もあると言う。
「ホリエモンの話はいい例かな。支持者は団塊の世代と、そう、私たち団塊ジュニアの世代。両方とも今まで苦労してきた世代だから、現状を変える異端児を求めているんだと思う」
今後の夢を教えてください。
「やりたいことがたくさんあってね、何から始めよう!?ってくらいなの」と好奇心の強さが伺える。
特に、学生時代から起業への興味があり(MBAの資格を持っている)若い女性を支援したいという気持ちが強いそうだ。
「女性の社会進出を支援するNPOみたいなのを作りたいの。まだまだ男性中心の社会だから、その中で生きていくための考え方を支援していきたい。それに消費者の半分は女性なんだから、もっと女性視点を生かした土壌をつくりたいと思っているんです」
中でも、女性が楽になるシステムが必要、と言う谷本さん。
「ある企業が会社の中に託児所を作ったっていうのを聞いたけど、子供をつれて満員電車に乗る人なんていないよね?ほんっと笑っちゃう、そこが男性視点のままなのよ。男社会の政治が動かしている国に任せるのではなく、民間でやっていかないとダメ」
女性が出世するためには男性の2倍働かないと認められない現実がある。たとえ完全に家事を半分ずつに分けても、結局は女性の方が働いている。その現状を変えるためにNPOを作りたい、と熱っぽく語ってくれた。
これから社会で活躍したい女子学生にアドバイスをお願いします。
「シビアな話だけど、やりたいことが仕事につながるとは限らない。天職よりまずは適職を見つけることが先決」
振り返ってみると社会に出てからの5年のほうが学生時代までの22年間より大きく知識と知恵がついたそうだ。5年たった後、改めて天職について考えればいい、と言う。では今やっておくべきことって何かを聞いた。
「パワーがあるうちにたくさんのことを吸収しておいて欲しいな。社会に出てしまったら、学生のころみたいにアグレッシブに動けない。とにかく失敗を恐れないこと。学生のうちに失敗から学んでいてほしい。社会に出たら、失敗できない時が必ず来るから。
それから、嫌だと思うことに挑戦すること。それが成長できるチャンスだから、頑張ってみてほしい」
そして女子学生へ。
「女性だからといって、卑屈になる必要はない。かっこいい女性を目指してほしい。『この人と働きたい!!』と、人間として認められる存在になってもらいたいと思います」
<アンケート:成功の要因>
1、 女って得だ=NO
2、 生まれ変わっても女に生まれたい=YES
3、 女として嫌な思いをしたことがある=YES
4、 女より男のほうが気の合う人が多い=YES
5、 仕事(学生生活)において性別による差別を感じたことがある=YES
6、 あまり賢くないふりをしたほうが、男から好かれる=NO
7、 二股をかけられるなら、かけたい=YES,NO
8、 恋愛は自分から積極的にいくほうだ=NO
9、 仕事と恋愛、どちらかしか成功できないといわれたら、仕事を選ぶ=
YES
10、 人生をやり直せたとしても同じ仕事(進路)を選ぶ=NO
11、 今の自分は幸せだと胸をはって言える=YES
12、 努力をしなくても成功している人はいる=YES
13、 自分はラッキーだ=YES
14、成功のために必要だと思うものを以下の項目から3つ選んでください。
“努力、能力、困難な課題、運、人脈”
| 第一位 |
出会い |
人によって、インスパイアされたり、新しいことを知ったり、自分の人生が方向付けられたりするものだ。人との出会いは、自分の新たな面との出会いといってもいいと思う |
| 第二位 |
冷静な分析 |
自己分析、他者との比較、環境分析をしっかりすれば叶わない夢はない |
| 第三位 |
情熱 |
情熱を持つ人のパワーにはかなわない。不可能を可能にできるのは、この「情熱」を持っている人である |
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インタビュアー感想
まさに会いたかった人に会えた!というのが一番の感想。かつてアナウンサーを目指していたころの理想像が目の前に立っていて、話しても話しても足りなかった。彼女だったら今の日本を変えてくれるに違いない、私も負けずに頑張ろう!とパワーをもらいました。(飯高)
女性らしい凛とした態度で、どんな質問にも笑顔で答えてくれたことに感動しました。『世界を見てきたから、日本女性の社会進出の遅れが分かる』とおっしゃる姿に、頼もしさと思いの強さを感じました。こんな方の意見がもっと世の中に発信されるべきだと思う。(須田)
よどみなく活き活きとした笑顔でお話して下さる谷本さんに引き込まれ、1時間があっという間でした。これから私たちが出て行く「社会」で、谷本さんのような女性が素敵にお仕事されているのが本当に頼もしく、自分も頑張るぞ!と嬉しくなってしまいました。(太田)